ふたつの指輪
「まるで……」

「……?」

「大きなネコ飼ってる気分だ」


ネコ扱いですか……。



「土日って、いつも何時頃まで寝てるの?」

「……昼前」

「そうなんだ」

「社会人は大変なんだ」


ぶつぶつ言いながら、ドリッパーを出す。


「あ!淹れる淹れる!コーヒー」

「……ああ」


曖昧な返事をして、ドリッパーをそのままにして、どさっとソファに沈み込む。



なんとか無事上手に淹れられたコーヒーを尊さんの前に置いて、あたしは切り出した。


「あのね、実は今日バイトなの。喫茶店の。

だから、悪いけど起こしちゃった。

そもそも、ここがどこだかわからないし」

「……ああ、そうか」


尊さんは、コーヒーをすすりながらうなずいた。
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