ふたつの指輪
(って、気にならないのかな?)


ちょっとそんなことが頭をかすめる。


「……ママが、ちょっと……」


(あたしを風俗で働かせようとしたの)


口から出かかった言葉を、思わず飲み込んだ。

尊さんの声が脳裏に響いたから。


(せっかく未遂だったんだから、今後一切俺以外には口にするな)


(俺以外には)


「……ママと、ちょっとケンカして……」


魁人くんは、そんなあたしをしばらく何も言わずにじっと見てた。


気のせいか、その薄い色の瞳にいろんな光がきらめいたように見えた。



やがて申し訳なさそうにため息をつく。


「オレんちに泊めるのは……ほら、オレ実家だからさ、ちょっと無理かな」


どこかうわの空で言う。

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