ふたつの指輪
「オレは瞳衣にウソばかりついてた。


ただ、一つだけほんとのことを言ってたのは――



オレ、どうやら本気で、瞳衣を愛してるらしいってこと」



「……魁人くん」




「瞳衣がオレを許してくれるなら……」




いかがわしいお店の立ちならぶけばけばしい狭い通りで、

酔っぱらった人たちが行き来するなか。



「許すもなにも、最初から、あたしは――」



(魁人くんの、すべてを――)



「瞳衣……」



あたしたちは、溶け合わんばかりにしっかりと抱き合って、ただただ狂ったようにお互いの唇をむさぼっていた。
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