ふたつの指輪
「普段からいいもん食ってねぇだろ。

しっかり食って栄養つけろ」


連れて行かれたのは焼き肉のお店。



……栄養といえば焼き肉って、男の人らしい発想だなぁ。



「遠慮すんなよ。

いつか出世払いで返してもらうからな」


口の端をちょっとだけ上げて。

いつものニヒルな笑み。


そう言われると、ちょっと気が楽になる。


お世話になりっぱなしじゃ、悪いもん。




「おいしい……」


あたしは、次々に運ばれる肉や野菜や一品料理を、ばくばく平らげてた。



「生まれて初めて物食うみたいな顔して食べるな、おまえ」


尊さんはまたしても、あきれたようにあたしを見てる。


「……だっておいしいもん」

「まあいいけど」
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