a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜

*重なる過去*





* * *


沚は、色が無かった。

先天性色素欠乏症───メラニンの生成に関わる遺伝情報に何らかの欠損があり、メラニンが欠乏してしまい、色を出すことが出来なかったのだという。

難しい話はわからないが、色が無い子供が産まれて、両親は驚きはしたものの、やはり我が子は可愛いもので、周りが向ける好奇の目を気にしながらではあったが、大切に彼を育てた。

紫外線には弱いから、とそこいらの女子高生よりも日焼け対策は徹底させ、目にも強い光を浴びないようにと注意をした。

沚は、特に疑問に思うこともなく、両親の言い付けを守った。


「沚の目は素敵な色。フランス人形のようだわ」


母の口癖だった。

目が青いことを気味悪がられて罵倒されたこともあった。

けれど、母のその言葉があると、自分は大丈夫だと言い聞かせることが出来る気がした。


「沚の髪は綺麗だな。なんか金運上がりそう」


父は沚の髪を撫でながらいつもそう言った。

髪の色が気に入らない、ムカツクと罵られたときも、この言葉があれば平気だった。




当時の彼にとって、両親の存在は、言葉は、精神安定剤だった。






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