a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜




その頃、基率いる屋台も大盛況だった。

何か温かいものを食べながらライブを観る人が多いため、おでんやそばなどは長い行列を作っている。

聞こえてくる演奏に耳を傾けながら、着々とうどんを売り捌く基は、中学生でありながら、まるで屋台のおっちゃんのようだった。

売り上げは全部、愛海の手術費用にあてる。この行事に協力することが、楡への恩返しになるのなら。

「慶一!危ないでしょっ」

うどんを茹でていると、厳しい女性の声が聞こえた。あわてて顔を上げると、目の前で母親に抱かれている小さな子どもが、身を乗り出すようにしてこちらを覗き込んでいるのだ。

「すみません、うどんを1つ…」

「あっ、はい!今出来ますから」

器に盛り付け、差し出そうとしたときに、母親が基に尋ねた。

「まだ中学生くらいなのに偉いね。バイト?」

「バイトっていうか…実は、この行事を主催してる人たちに一度お世話になってて…何か恩返しをしたいなって思って、屋台っていう形で参加させてもらってるんです」

はにかむように答えた基に、女性は柔らかく微笑むと、再び口を開いた。

「…私もそうなの。彼らにはお世話になったから…来場者として、応援にね」

「しおり〜、慶一、まだかぁ?」

後ろから、二人を呼ぶ声がする。しおり、と呼ばれた女性は声のした方に向いて、それからまた基に向き直り、

「じゃ、頑張ってね!」

と手を振りながら歩いていった。


基はその背中を見送りながら、aucは色んな人を繋いで、助けてきたんだなとしみじみと感じていた。





< 286 / 313 >

この作品をシェア

pagetop