おいしい紅茶を飲む前に
 衝立の向こうにそのご主人の姿が見える。

クリストファーロビン・ローダーディル伯は、なんとも言えない不思議な表情を浮かべていた。苦悩、あるいは後悔、それとも戸惑い。

 彼が座る椅子の横に、午前中に遭遇した『ジェラルド』が、悩める風情なんてちっとも似合わないままに突っ立っている。


 シェリルはすでに自分よりも熱心な隣の人間を見上げてみた。

無表情なんて言葉は使いたくない。メレディスは思いすべてを包み隠して、恐るべき冷静さで状況の分析を行っているのだ。

 美しく装った紳士淑女たちの大広間。この国の社交界のことは知識としてしか知らないシェリルには、まったく歯が立たない問題だ。

何者かどころか、公爵本人でさえ確認できない。
< 40 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop