おいしい紅茶を飲む前に
 気の抜けたような口調で、ジェラルドはそう言ったけれど、すぐに何かに思い当たってクリスを振り返る。

ふたりの間に地を這うような重苦しい視線が交わされた後、伯爵は椅子から離れて、フレディの前に進み出た。


「すまないが、フレディ。君の悪い予感はいつものように的中だ。僕たちは油断していたのかもしれない。まさか、なんて言葉は言い訳にしかならないな」

「……いや、謝らないでいいんだ。問題は別のところにあることを知っているんだから。どうなっている?」

「事が起きたときに最も側にいたのが、リチャードとメアリーだったんだ。どうしてその組み合わせになったのかは、想像すればきっと当たる」

「どこに行ったのかはわからない? 屋敷からは出ていないんだ」
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