おいしい紅茶を飲む前に
「必要のないことだ。ご婦人にはこちらでお待ちいただく」

「僕の見えないところで何かが起きそうでは、通訳どころじゃないんだよ。それでなくても王子の言葉は非常に難解なんだぞ。君達の要求を正しく伝えて欲しいなら、レディも一緒の方がいい」


 その男の振り仰いだところからすると、王子の右に立つ男が、彼らのリーダーであるらしかった。しばしの間を置いて、許可するとばかりに小さくうなずく。

 リチャードは薄く笑いを浮かべながら、組んでいた足をほどき立ち上がった。

その笑いを見ることができたのは、天井から見下ろしている人間と、それを向けられたメアリーアンだけだ。
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