おいしい紅茶を飲む前に
 彼女の背に腕を回したリチャードは、いたってくだけた調子で、すぐ横の男の握る銃に手をかけた。


「これは下ろしていた方がいい。こんな状態でこちらに何ができるはずもないだろう」

「つまらない事は考えない方がいい」

「それほどのばかじゃないさ」


 シェリルは騙されているような思いがしていた。

きっと、あの男は騙されている。これは絶対、本当だ。
だって彼は自分で言うように、それほどのばかではないのだから。

 まったく反対の立場にも関わらず、シェリルは反逆者の方にすでに同情を寄せてしまった。

確信を持って予測するに、この先に起こることは彼らの方が気の毒だ。
< 59 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop