共鳴り
「…やから、必死で一千万?」


「そうらしいわねぇ。
でもまぁ、あの子が自分で決めたことよ。」


いっつも清人はそうやねん。


全部自分で決めて、勝手に人の人生背負いたがる。



「俺の人生考えるのは、陸がこの世界抜けた時だ、って。」


「…どういう意味?」


「プラス一千万で、ジルくん自身が抜けられる、って嶋さんとの約束らしいの。」


じゃあ、アイツ二千万稼ぐつもりやったん?


常識で考えたって無理やし、一体何年掛かるかもわからへん話やのに。


つか、それ以前に守られるかどうかすら定かではない“ゲーム”やで?



「嶋さんだって可哀想な人よ。」


「…可哀想?」


「誰も知らないだけよ。」


嶋さんのことについても、多分レイコさんは過去とか全部知ってるような口ぶりやった。


でも、決して多くを語ることはなく、自分たちの関係については触れないようにと話しているように聞こえた。



「子供、愛してないわけじゃないらしいの。」


嶋さんにはふたり、血の繋がった息子が居ることは周知の事実やろう。


俺らにはわからないけど、曲がりなりにも自分は“父親”であり、会いたいとは思っているらしい。


けど、息子たちは、母親、つまりは嶋さんの元嫁の味方であり、彼女を傷つけたと思っている父を憎んでいるから、と。


プライドの高い人やからこそ、表立って言わないだけ。


そして、だからこそ俺と清人を自分の息子たちにどうしても重ねてしまう部分がある、と言う。

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