共鳴り
「なら、俺らは嫌われてるんか好かれてるんかわからへんね。」


「あたしだってそこまで知らないけど。
でも、不器用な人ではあるのよ。」


気付いてないわけではない。


そして、弱音にも似たそんな話をレイコさんに吐露するなんて、ふたりはやっぱり気の置けない間柄であることは確かやろうとも思う。


けど、今はそんなこと、どうだって良い。


嶋さんのことは確かに恨んでるけど、でも、こんな話を聞いてしまえば、どう感情を処理して良いのかもわからなくなる。


大嫌いやのに、嫌い切れなくなってる自分が居る。


決して“不器用だから”で、嶋さんの所為で清人が苦しんでるのを正当化は出来へんけど。


でも、大元を辿ればあの人は、助ける義理すらない俺らの命を守ってくれた。


利用するためにだと言いながらも、飯食わせてくれたり、それなりに心配してくれたりしてたはずや。



「…俺、わけわからへん…」


結局のところ、誰も悪くないんじゃないか、って思ってしまう。


それが嶋さんの仕事で、だから俺らが命拾いしたからには、手助けするのが当然や。


けど、こんな仕事してる以上、レナちゃんにしても理乃にしても、俺らは幸せにしてやることは出来んねんから。


もしかしたら嶋さんは、それさえわかった上で、清人とレナちゃんの仲を引き裂くために一千万の話を言い出したのかもしれん。


俺らはあの人にとって、“大事な息子たちの代わり”やから。


それでも立場上、そしてプライドも重なり、表立って簡単に辞めさせてやる、とも言えないし、言わないし。


だってそしたら、“大事な息子たちの代わり”がおらんくなる。


嶋さんだって人間やし、もしかしたら苦しんでるんかもしれん、って。

< 234 / 339 >

この作品をシェア

pagetop