共鳴り
車から降り、俺はアイズの前に立った。


久々に来たけどこの場所は、何の変化もないように、相変わらずのネオンの色に染められている。


ちらほらと、通りには仕事を終えたホステスたちが増え始め、ヤバいな、と思った。


もしかしたらもう帰ってるかもやし、アフターとかやったら最悪やで、と思ったその瞬間。



「…ギン、ちゃん…?」


呼ばれ、弾かれたように顔を向けてみれば、レナちゃんの姿。


ひどく安堵したと同時に、一気に緊張が全身を駆ける。



「彩ならもう少し待てば出てくると思うけど?」


まるで突き放すように投げられた一言。


俺は清人のシャツをぎゅっと握り締め、レナちゃん、と一呼吸置いた。



「忙しいの、あたし。
悪いけど、くだらないお喋りになんか付き合ってる暇ないから。」


「…ジル、死ぬかもしれん…」


言ってて、本当に嫌になる。


急に何もかもが現実めいて感じ、“死”をよりリアルに浮き彫らせる。


彼女は一体何を言っているのか、という顔になったが、それでも俺は続けた。



「…刺されたんや、アイツ…」


「…何、言って…」


レナちゃんの顔が、急に戸惑いに変わった。


俺の言葉なんか信じてくれる保証もないけど、ホンマやねん、と強く言う。


頼むから、頼むから、頼むから、って。

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