共鳴り
やっぱり驚かずにはいられない。


キョトンとしている俺に向け、彼は「そうそう!」と言ってポケットを探る。



「これ、落ちてたらしいよ。」


見るとそれは、俺のキーケース。


差し出されたそれと国光さんの顔を交互に見ていると、彼は笑う。



「アメ車の鍵って銀二しかいないでしょ?
ヤスくんが落ちてたの気付いて、ついでにお前の車も持ってきてくれたって。」


車もないのに焦って行くつもりだったの?


そんな風に言われ、やっぱり全部見抜かれているみたいやった。


そんな俺が何か言うより先に、国光さんはさっさと背を向けてしまう。


みんなみんな、思ってることがわかりにくくて仕方がなくて、でもやっぱ、清人のことが好きなんやろう、って。


やから、ホンマに感謝した。


清人はみんなのために、絶対死んだらあかんのやで、って。





花穂ちゃん――

俺の唯一の我が儘を聞いてください。



清人のこと、そっちに連れていかんといて。


アイツがホンマに愛した女がこっちにおって、やから俺、もう幸せになってほしいねん。


いつか俺が死んだらいっぱい遊んだるから、だからもうちょっとだけ、清人をこっちにおらせてやって欲しい。


花穂ちゃんかて、清人の幸せを一番に望んでるやろ?





外には漆黒の闇が広がっていて、想いとは裏腹に、どうしようもない不安に今さら襲われる。


手に持つシャツに視線を落とすと、ひとりっきりになった中で、またあの光景が蘇る。


それでも俺は、ぐっと唇を噛み締めた。

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