共鳴り
『…嶋さん、どうしてる?』


「何か大変そうやし、俺にはよくわからへんけど。
みんな居るし、多分大丈夫やと思うよ。」


そう、と彼女は言った。


本当に俺がレイコさんの携帯に掛けるのは珍しいんやけど、決まって後ろからは、ジョン・レノンが微かに聴こえてくる。



「帰ったら、めーっちゃ美味いコーヒー淹れてくれへん?」


嫌よ、と言いながらも、彼女は笑う。


夜が開けるのはもうちょっとだけ後やろう、空の色。


電話を切り、一服してから俺は、清人の病室の前に戻った。


中に入ろうかとも思ったけど、ふたりは久々に会ったんやろうし、どうにも邪魔したらあかん気がして、とりあえず椅子に腰を降ろした。


この一日二日の間に色んなことがありすぎて、さすがに疲れてしまったけど。


目を瞑ると、ふと理乃の顔が浮かび、それを振り払う。


その刹那、ドアが開いてレナちゃんが顔を出したので、視線を上げた俺に、彼女は呼んでるよ、と中に入るように促してくれる。


そういや俺ら、話さなあかんことがいっぱいあったんやった。


少し緊張した面持ちのままに室内に入ると、清人と目が合い急に気恥しくなった。



「なぁ、ギン。」


「何やねん、ハグなら男は勘弁やで?」


いや、そんなんどうでも良くて。


まず何から切り出せば良いのかわからへんし、それより空気が重く感じて仕方がない。


笑ってやるが、真面目そうな顔した清人に諦め俺は、「んで?」と切り出した。


彼は重い口を開く。



「俺の最初で最後の我が儘、お前は許してくれるか?」

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