共鳴り
その時、キィッとドアの蝶つがいが鳴った。


その場の全ての人間が驚いたような顔をして、そして焦ったように腰をかがめたんや。


お疲れ様です、ご苦労様です。


口々にそう言う光景を前に、嫌でもその男がこの中で一番ヤバいんやと思った。




ムスクの香り。

格闘家のような体つき。


そして浅黒い顔と、
高級そうなスーツ。





「こりゃあ何事だぁ?」


部屋を見渡した彼は、あからさまに眉を寄せた。


男が煙草を咥えると、どこからともなく火を差し出される。



「嶋さん!」

「カシラ!」


男達は相変わらず口々に言いながら、事の次第を話して聞かせていた。


カシラの登場で、もっとヤバくなると思った。


始末をどうするか、と捲くし立てられた嶋さんと呼ばれた彼は、俺らを一瞥し、ふうっ、と息を吐いて宙を仰ぐ。



「堅気のガキを殺したって、一銭の得にもならねぇだろ。
第一、こんなやつらにやられたなんて方が馬鹿じゃねぇのか?」


「…しかしっ…!」


「うるせぇなぁ。
しょうがねぇからその二匹、俺が飼ってやるよ。」


今考えても、この時の嶋さんがどんな気まぐれで言ったのかはわからへんけど。


でも、俺らの命はその言葉で、辛うじて繋ぎ止められたんや。


誰も嶋さんの言葉に逆らうことは出来んかった。

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