共鳴り
部屋には俺と清人、そして嶋さんと3人の帳が下りる。


先ほどの言葉の意味を理解出来るほど頭は上手く働かんかったし、嶋さんの瞳が動く度、正直怖くて震え上がってた。



「…陸は俺の所為でこんなことになったんだよ!
頼むから、コイツだけはっ…!」


清人が頭を下げる。


花穂ちゃんの親の前で見せた時みたいに、なりふり構わんと必死そうな横顔。


正直、助かりたかった。


けど、俺だけ助かろうなんて思わなかったし、清人だけ残して、って無理やろ。



「えぇねん、清人。」


覚悟を決めた。


俺らの会話に耳を傾けながら、嶋さんはふっと口元だけを緩めた顔をする。



「青臭ぇ友情劇だなぁ、おい。
他人の心配するより前に、自分の心配したらどうだ?」


そんなん、俺らの頭にあると思う?


昔からずっと、助け合って支え合って生きてきた俺らはいつの間にか、自分のことより相手を優先させること考えるようになっていたから。


嶋さんはそんな俺らを見て、やっぱりどこか可笑しそうに笑っていた。



「まぁ、何をするにもその顔じゃお前ら、どうにもならねぇしなぁ。」


そう呟いた後、



「おい、国光!」


彼がドアに向かって叫ぶと、少しして、コンコンとノックする音が響き、そして扉が開いた。


冴えないひょろっとした男が現れて、嶋さんは彼に耳打ちをする。


それが国光さんとの初対面やった。

< 54 / 339 >

この作品をシェア

pagetop