共鳴り
簡単に言えば、女の全てを絞り取り、捨てるように風俗に落とすこと。


俺はそれを聞きながら、まるで別世界の話でも聞いているかのようだった。


到底受け入れられるはずもないし、第一人を騙すだなんて、それだけはしたらあかんってポリシーも持ってたつもりやったから。


確かに俺らは社会から見ればどうしようもないガキやったけど、盗むこと、騙すこと、婦女暴行、そしてクスリだけは、暗黙の了解みたいに禁止してた。


なのに、出来るわけないし、やりたくないし、やれるはずもない。



「選択肢はふたつよ。
従うか、無理なら死ねば良い。」


レイコさんは、そんな俺に冷たい瞳を投げた。


いとも容易く放たれる、“死”という単語に驚いた。


俺は、俺らはもう、元の世界には戻れなくて、抜け出す道はないのだと悟った。



「そんなんおかしいやろ!
アンタだってどうかしてるで!」


「どうかしてる、ですって?
面白いことを言う子ね、銀二って。」


「俺はそんな名前ちゃうわ!」


レイコさんも、嶋さんも国光さんも、頭がおかしいとしか思えなかった。


三流映画にもならないようなこと言って、それを普通だと思って受け入れてる。



「なら死になさいよ。
無理ならあたしを殺してここから逃げてみれば?」


どうしてそんなに死にたがるのか。


第一、人を殺すなんて無理やし、逃げたら清人がどうなるかわからない。


俺は悔しさの中で唇を噛み締めた。

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