国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

「ん・・ヴェローナ・・」


男の寝言が、羽のようにかすかに聞こえた。


ヴェローナのためだけに、王位を捨て、

ヴェローナのためだけに、子供を跡継ぎに据え、

そしておそらくは、今また、その子供のためだけに、大嫌いな王宮へ舞い戻った男。

愛する女の・・・血の繋がらない、義理の息子のために。


ニュクスは、ほんのわずか、ヴェローナに嫉妬を覚えた。

死んでからも、男の心を捕らえて離さない。

それは、政略結婚をしたニュクスにはありえない話だ。



・・ごめんなさいね。ヴェローナ様。

今だけは、独り占めさせてね。



ニュクスは、男の唇を塞ぐように、自らの唇を重ねた。





『いつでも逃げられるように、準備をしておけ』


昨夜、その忠告をするために、秘密の通路を通り、危険を冒して現れた男。

自分とディスコルディアのことを、男が忘れていなかったことだけが、

ニュクスには何より嬉しかった--。







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