国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
ランドの安堵とうらはらに、アニウスは、彼に背を向けた。
何の指示も出そうとはしない。
ランドの視線の先を追ったマルスは、一連の騒ぎの張本人が誰なのかを理解した。
・・そういうこと、か。
「ランド将軍に意見がないのなら、諸君に聞こう!
言いたいことのあるものはいないか!」
マルスは、ぐるりと見渡すが、警戒しているのか、誰も積極的に発言しようとしない。
その時、一人の老人が、弱弱しい声を上げた。
「わしは、家族を飢えでなくしたくない。
必死にここまで生きてきて、息子や孫が、自分より先に死ぬなんて、耐えられん」
「わかった。非常用の蔵を開放したが、それを懐にしまいこんだものがいる。
それが誰かの見当はついている。即刻、皆に配布されるよう、手配することを約束しよう。
残っている蔵も全て開放させる。贅沢は無理でも、それでなんとか食いつなげるはずだ」
「体力が落ちて、病にかかっているものが、大勢いる」
老人の発言に押され、すぐ隣にいた男が声を上げた。
「神殿を開放して、ウェスタの巫女たちに診てもらえるよう取り計らおう。
神官も巫女も区別なく、民を診療できるように。
だが、巫女の絶対数が足りない。悪いが皆にも、協力してもらう」
マルスは、次々に上がる民の要望と質問に、自分ができることとできないことを説明し、
嘘偽りなく、淡々と述べた。
その姿勢に、民は、ほんの少しずつ、マルスの誠意を感じ始めた--。