ワケありな三人
右田さんは客を覚える事より、客がいることを忘れる事に熱心だ。





当然、1号を覚えているはずがない。





かわいそうに。





「そういえば太田君は彼女いないの?」





こいつ…オレの1番気にしていることを。





「今はいないですね。一ヶ月前に別れちゃって、それっきり。」





はいはい、いませんよ。いたこともないですよ。





「そっか、いないんだね。」





右田さんはなぜかにやけている。





「なんですか、その笑いは?」





「いや、なんでもないんだ。」





そう言って、商品棚の整理に向かった。
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