たんぽぽ
 この風邪は思ったより長引いた。

 寒い中、何時間も川にいたのがたたったのは明白だった。最近の精神的な疲れのせいもあったのかもしれない。とにかく、なかなか良くならなかった。

 僕は丸2日も寝続けた。

 今週の金曜日、つまり、明後日、24日は卒業式だったが、僕はすっかり忘れていた。

 23日の早朝7時に朝日で目が覚める。

 薬が効いたのか、大人しく寝ていたのがよかったのかすっかり体はよくなった。ただ、ずっと寝ていたためであろう、体がだるくうまく動かすことができなかった。

 今日23日は卒業式の練習だったような覚えがある。

 そういえば、明日は卒業式じゃないか。

 僕の学校は中高一貫のため、ほとんどの卒業生がそのままここの高校に入学する。高校にあがるにあたってテストもないので、僕達は何も気にすることなく中学三年生をやって来た。

 卒業式も形だけで親もそんなに多くは来ない。実際、僕の親も来ないと言っていた。

 そのため卒業式の練習と言ってもほとんど何もしない。入場・退場の仕方と座る椅子の位置の確認と最後に卒業生で歌う「仰げば尊し」の練習くらいだ。

 朝の8時くらいに親戚のおばさんに風邪がすっかり治ったことを話すと、「大事をとって今日も休みなさい。今日無理して行って明日の卒業式に行けなかったらたいへんでしょ」と言われたので、この日も学校を休むことにした。

 そのとき僕の視線に携帯電話が入る。

 あっ!と思いあわててそれを手に取り見てみる。今井家からの着信履歴も公衆電話からの着信履歴もなく、実家からの着信履歴だけがあった。春華からの電話はなかったようだ。

 まだ春華は学校に来てないのだろうか?それとも、もう春華は学校に来て、あのホワイトベアーとあのメッセージに気づいたのにもかかわらず連絡をくれないのか。

 僕は急に不安になった。もしそうだったとしたら…、春華はもう僕と話したくないのだろうか。ネガティブに考えてしまう。とにかく僕は春華が学校に来ているかどうかが知りたかった。

 あわてて携帯電話を持っている英男に電話して、聞いてみる。
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