たんぽぽ
 ひどい頭痛で目が覚めた。咽喉の奥に痛みを感じる。

 咽喉の渇きを潤すために立ち上がり、冷蔵庫に向かう。

 体がやけに重い。ペットボトルのお茶を直接、飲みほす。お茶が咽喉を通る度に激痛が走る。風邪でも引いたのか。そういえば寒気がする。

 とりあえず、重い体をもう一度ベッドまでもっていき布団をかぶって寝た。

 途中、親戚のおばさんが来て、「風邪を引いてしまったし、学校を休みます」と会話をした覚えが微かにある。薬をもってきてくれて、それを飲んで死んだように眠った。

 僕は夢を見た。

 いつかのように春華がお見舞いに来てくれるということで、部屋を掃除しながら待っていた。

 窓の外はあの日と同じようにいい天気だった。

 僕は床にあった服も机の上も片付け終えた。

 まだ、春華は来ない。

 仕方なしに、今度は部屋に掃除機をかける。

 かけ終わっても窓の外の道に春華の姿は現れなかった。

 少し遅い。もしかしたらまた迷ったのか。携帯電話は鳴っていないし、もうこの部屋には何度か来ている。きっと用意に準備がかかったんだろう。もうすぐ来るはずだ。

 そうだ、この間にベッドの上の棚を整理しよう。

 まず、MDとCDをきれいに並べる。それからいらなくなった小物類を捨てていく。

 ふと、時計を見る。僕は目を疑う。

 午後四時半。もう春華は帰る時間ではないか。しかし、春華はまだ来てない。携帯電話も鳴っていない。

 窓から差し込む夕日の色がやけにくすんで見える。

 ……。

 ハッ!と目が覚める。

 夢か…。

 春華がお見舞いに来てくれるわけがない。ひどい頭痛と高い熱のせいで頭が混乱する。体がだるくてすぐに眠った。
< 33 / 70 >

この作品をシェア

pagetop