たんぽぽ
 僕は普段家にいない分、家に帰ると相当の〝いい子〟になった。

 掃除・洗濯・料理と、家事の手伝いをし、五人兄弟の長男だったというのもあり、兄弟達の面倒も良く見た。

 家では、親孝行のいいお兄ちゃんをしていた。

 そのため、両親はそんな僕を信用していたのだろう。僕はそのことをしっかり把握していた。そして、知らず知らずのうちにそれを利用していたのかもしれない。

 僕はずる賢い人間だった。

 寮は、学校の山の麓の駐輪場のすぐ横にあった。

 建物の外装はきれいなレンガで統一されていた。寮のすぐ裏には緑豊かな山があり、春には色とりどりの花が咲き、秋になると様々な虫達がきれいな演奏を聞かせてくれた。

 男子寮と女子寮があり、それは大きな食堂でつながっていた。食事は朝・晩と出たがリボン館と同様、お世辞にもおいしいとは言えなかった。

 寮には、僕同様県外から来ている人や県内でも通うことのできない地方の方からやって来た人が男女合わせて二百人程いた。

 その中に中学から仲の良かった友達もいて、寮生活も悪くなかった。

 リボン館での生活が定着していた僕は、自力で朝起きることが困難だった。

 入寮当初はよく仮病をつかって休んでいたが、しばらくして、ある寮監の先生にそれを見破られてしまい、それからは毎朝起こされるようになった。

 大きなお世話だったが、そのおかげで朝から学校に行けるようになった。

 この頃から先生達に対する反発心も薄れつつあった。

 寮生活において、不自由なこともあった。

 それは煙草である。

 もちろん、見つかってしまえば謹慎処分になってしまう。そのため、部屋のベランダに出て隠れて吸うしかなかった。

 夏は暑い上、山が裏にあるためか、蚊が大量発生し体中を刺されたし、冬は指先が凍るほど寒くて、一本吸うのにもたいへんだった。

 また、煙草がなくなり、買いに行くのも一苦労だった。

 寮は原則、外出は土日しか許可されなかった。そのため、土日に買いだめをしなければならない。

 もし、週の途中で煙草がきれてしまえば、友達にもらうか、それも無理なときは、吸い終わった吸殻の中からまだ吸えるものを探し出し、それを吸っていた。
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