たんぽぽ
 次の日、僕は眠い目をこすりながら、学校に行った。

 この日は太陽が照っていて、風もなく12月の終わりにしては暖かい一日だった。

 大掃除をすませ、意味もない終業式に出た。昨日、寝ていないせいであまりにも眠く、ウトウトしていたら知らない間に終業式は終わっていた。

 学校も終わり、僕は教室を出て、バス停に向かって歩く。すると、携帯電話が震えているのに気づく。竹本からの着信だった。

 僕は立ち止まり電話に出る。

「はい。どした?」

「あっ高嶺?あんた今どこいるの?探してたんだけど見つからなかったし、電話したんだ」

「エッ?今はバス停に向かってるとこ」

「もう帰ってるの?今終わったとこじゃん。どおりで探してもいないと思った」

「うん。昨日あんまり寝てないし、帰って寝ようかと思って。で、なんかあったの?」

「うーん…。ちょっとそこで待ってて、電話じゃちょっとね。そこどこ?」

「なんだよ。別に電話でいいじゃん」

「まぁまぁ。どこ?もう外?」

「うん。じゃあ、バス停の手前の階段のとこにいるよ」

「わかった。じゃあ、待っててね。すぐ行くし」

「了解」

 僕は電話を切り、階段に座った。

 終業式を終え、多くの生徒がバス停に並んでいる。グランドにはクラブ活動を始めた生徒もチラホラ見え始める。

 この日は、本当に天気の良い日で、日向にいるとポカポカしてまるで春が来たのかと思わせるほどだった。

 ところで、竹本は何の用だろう。今日は、竹本とは何も話してないし、一緒に勉強をする約束もしていなかったはずだ。

 そういえば、竹本はやけに嬉しそうだったような…。

 僕はその瞬間、昨日急いで塾に行く前の竹本の顔が頭に浮かんだ。と同時に、背筋に電気が走る。

 まさか、竹本のヤツ…!

 僕は焦った。

 もし、竹本が昨日のことを春華に話したとすると…。しかし、電話口での竹本からは深刻な様子はうかがえなかった。

 もしかしたらもっと別のことだろうか。

 僕はバス停に来たバスを見下ろしながらそんなことを考えていると後ろから誰かが走ってくる足音と共に声が聞こえる。
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