転んだら死神が微笑んだ
お父さんがハブラシを持ちながら、玄関にたたずんでいる。

あかり「え、いや…」

わたしは急いで外に出た。

お父さん「『行ってきます』って言わなかった…?」

お父さん「う…うっ!良子ー!!良子ーっ!!あかりがー!あかりが〜ぁ!」

お父さんは、口から泡を飛ばしながら、大声で泣いていた。

その声は朝っぱらから近所に鳴り響いた。

出かけている通行人たちが、びっくりしながらこっちを見ている。

わたしは、たった今この玄関から出てきたというのに、他人のフリをしようとしていた。
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