月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
東の声色に真剣なものが混ざる。

あたしは少し緊張感を覚えた。

「どこらへんから話しましょうか?」

「吉原しのぶさんと会ったあたりからお願いします」

「わかりました」

東は姿勢を正してから話をはじめた。

「昨日、僕としのぶさんは午後6時ごろ銀座で待ち合わせをしました。以前からしのぶさんの買い物に付き合う約束をしていたのです」

警察相手に何度も話したからだろう。

東の口調によどみはなかった。

「買い物を終えた後に、そのまま銀座で食事をしました。食事の後は僕の店に向かうことになっていました」

いわゆる同伴出勤というやつだ。

それを達郎に説明しようとしたら

「それは聞いた事ある」

と返された。

あらそうですか、と恐縮したその時である。

「おふたりは恋人同士なんですか?」

東の問い掛けにあたしは狼狽した。

「い、いえ別に…」

「すみません。おふたりの様子みてたらそう思えたもんですから」

東は白い歯をみせた。
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