月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
しのぶはその声を無視するかのように体を反転させ、そのまま滑るようにベッドから降りた。

「しのぶ?」

横倉の声はしのぶを追いかけたが、彼女を捕らえることはできなかった。

そして声から逃れたしのぶは、一糸まとわぬ姿で窓際に立った。

月光が、しのぶの裸身を照らした。

先ほどと同じく、否、先ほどよりも白く映える彼女の肌の美しさに、横倉は思わず息を呑んだ。

彼女の美しさは体の隅々までよく知っている。

だが今のしのぶには、見たこともない妖艶な色に染まっていた。

明らかに、自分の知らない女がそこにいた。

横倉は再び息を呑んだ。

「あたしね…」

女の唇が動いた。

かろうじて声はしのぶのものだった。

「夢を見るの。もう何年も前から同じ夢を…」

しのぶはふっとため息をついた。

「どんな夢だと思う?」

答えられなかった。

わかるわけないなどと、軽口を叩ける心境ではなかった。

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