月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
しのぶは自らの腕で己の裸身を抱いた。

彼女は明らかに興奮していた。

「あたしをこんな気分にさせてくれるのはあの人だけ…」

自分の喉を切り裂く男を「あの人」と呼ぶ。

横倉はひどく動揺した。

ついさっきまで自分の腕の中にいた女が、他の男の夢を見ていたのだ。

しのぶはその男のもとへ走るつもりだ。

氏素姓もわからぬ夢の中の男に。

しかも殺されるために。

「しのぶ、僕では駄目なのか!?」

横倉は絶叫に近い声をあげた。

しかし彼女はすげなく首を振った。

「あたしは殺される運命なの。でもそれは貴方にではないわ」

そう言われた横倉の頬を一筋の滴が伝った。

彼はいつの間にか涙を流していた。

窓際から離れたしのぶが彼の傍らに戻ってきた。

ごめんなさい。

そう言ってしのぶに頭を撫でられた。

横倉はしのぶの身体をベッドに押し倒した。

そして泣きながら、彼女の身体を抱いた。

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