月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
奇妙で、おどろおどろしい告白に対処しようがないのだろう。

「ああ、すまなかったね、洋子ちゃん」

横倉は通りかかったボーイを呼び止めると、ドンペリのピンクを注文した。

「変な話を聞かせたお詫びだよ」

そう言って横倉が笑うと、洋子もさすがに表情を崩した。

このへんはホステスとしての習性だろう。

「訊いてもいいですか、横倉さん」

それまでずっと黙っていた達郎が口を開いた。

「吉原さんの夢の話、今はどう思ってますか」

「どうと言いますと?」

「こっちは真剣にプロポーズしてるのに変な断り方しやがってとか、そんな風には思いませんでしたか」

横倉の表情が固まった。

しかしそれは一瞬のことだった。

「彼女の言葉には鬼気迫るものがありました。ふざけてたとしたらタチが悪すぎますよ」

横倉は肩でやり切れなさを表現した。

その時、ボーイがピンクドンペリを運んできた。

どうやら話を訊くのはここまでかな。

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