月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
あたしは最後に事件当夜の話を訊くことにした。

横倉に事件当夜の行動を訊くと

「それは私に容疑がかかっているということですか?」

「関係者の方にはすべて同じことを訊いています。形式的なものとお考えください」

あたしは硬い空気にならないよう、できるだけ穏やかな顔と声を作った。


こういうやり取りをしている時、あたしは接客業ってこんなんかなぁと思ったりする。

「最近は新しいジムの設立でトレーナー探しに奔走してましてね」

昨夜は有名トレーナーをスカウトするため、銀座の料亭で接待をしていたそうだ。

「午後10時から午前0時ごろまではどこにいましたか?」

「接待を終えて、帰宅途中だったかな」

実は都民ではなく神奈川在住なんですと笑った。

「毎日車で通勤していましてね」

昨夜の横倉の足取りを確認してみるか。

あたしはそう決めると店を辞すため、達郎に目で合図した。

うなずいた達郎の唇は、いつもより尖っていた。

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