月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
「達郎!」

「どうした、レミ」

「東久志が、失踪したわ!」

午前10時ごろ、外出した東を張り込んでいた捜査員が尾行した。

その後、東は2時間ほど繁華街をぶらついていたそうだが、やおら人ごみに紛れると、そのまま姿を消したという。

捜査員の失尾だった。

しかし、これはどういうことだろう。

あれほど己の潔白に自信を持っていた東が姿を消すなんて。

まるで疑ってくれといわんばかりではないか。

あたしはすがるようにして達郎を見た。

達郎は唇を尖らせてその視線をしっかりと前に向けていた。

まるで未来にある、事件の真相を見るが如く。

「小山さん、缶コーヒーはありますか!?」

「缶コーヒーですか?」

洋子は目を丸くした。

当然だろう。

しかしこの時のあたしは他人の反応など構っちゃいられなかった。

「すいません、缶コーヒーは…」

「無いなら早く買ってこないと!」

そして近くに自動販売機かコンビニはありますかと続けた。

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