月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
洋子は明らかに狼狽していた。

ここは達郎に任せるつもりだったが、この機会を逃すワケにはいかない。

吉原しのぶに横倉以外のパトロンがいたとしたら、あの金銭感覚もうなずける。

もしかしたら事件に新たな展開が生まれるかもしれない。

「小山さん」

達郎の声に、泳いでいた洋子の視線がとまる。

「貴女の立場は理解できます。ですが一人の人間の命が失われてる以上、我々はどんなことでも知らねばなりません」

達郎はいつもの、どこか憂いを含んだ瞳で洋子を見つめた。

それに対する洋子の表情に、あたしは半ば勝利を確信した。

いいぞ達郎っ。

なんなら手のひとつでも握ってやれ。

今回だけなら許すっ。

そう心の中で声援(?)を送っていた時、けたたましく携帯が鳴った。

ええい誰だこんな時に。

あたしは携帯を見た。

電話をかけてきたのは上司の岸警部だった。

あわてて電話にでたあたしに、岸警部は驚きの出来事を伝えた。

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