月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
だからこそ岸警部や星野警部補も達郎の提案に乗ったのだ。

あたしがもう一度時計を見ようとした時、玄関ドアの鍵が開く音がした。

体の中を緊張という文字が走る。

ドアが静かに開き、何者かが部屋に入ってくる気配がした。

次の瞬間。

「動くな!」

岸警部の怒声が部屋に響き渡った。

激しくとっくみ合う音と共に、星野警部補の怒号も聞こえてくる。

あたしと達郎はソファの影から立ち上がると、部屋中の電気を点けた。

明かりの下、キッチンで1人の男が岸警部と星野警部補に取り押さえられていた。

男の正体は達郎の推測した通りだった。

初めて会った時と同じ芥子色のスーツ姿だった。

「やはり来ましたね、横倉さん」

達郎はつぶやくように言った。

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