月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
東久志は白ジャケットに金髪という小林巡査の目撃証言と、直前まで被害者と一緒にいたという事実で容疑がかかる一方、鉄壁のアリバイを主張できるようになった。

愛人という立場からいずれ捜査線上に浮かぶかもしれなかった横倉には、はじめから嫌疑がかからなかった。

それもこれも黒に近い灰色の容疑者を仕立てあげたためだ。

「横倉さん、あなたは実に巧妙な工作を行った。しかしそれ故に誤算が生じた。そうですね?」

「なにもかもお見通しなんだな」

横倉は唇を歪め自嘲的な笑みを浮かべた。

巧妙なアリバイ工作は、確かな効果をあげて捜査陣を困惑させた。

しかしそのせいで東久志が増長したのである。

「あいつめ、上手くいったのは自分のおかげなんだから報酬にもう少し色をつけろと言ってきやがった」

横倉は吐き捨てるように言った。

あたしの中に先ほど感じた不快感が蘇ってきた。

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