月と太陽の事件簿6/夜の蝶は血とナイフの夢を見る
「金欠?」

あたしは思わず問い返した。

この坊ちゃん育ちの男から金欠という言葉を聞くのははじめてだった。

まったく、今回は珍しいことだらけだ。

「小山洋子に一万円札を渡したろ?」

あたしは先日の出来事を思い出した。

「あれ、千円札と間違えたんだ」

は? なにそれ?

「そんなワケで今月のバイト代が出るまでは金欠状態なんだ」

おいおい、いくら推理に熱中してたからって間違えるか、ふつう?

あたしは横倉を取り押さえた時の達郎の姿を思い出してみた。

ダメだ。どうやっても今の達郎からは想像がつかない。



あれはあたしが見た夢だったのかしらん。



つい×2、そんなことを考えた。





『夜の蝶は血とナイフの夢を見る』

END

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