イジワルな恋人
【亮SIDE】
……―――夢を見た。
“桜木は奈緒の事を何もわかってない。
奈緒に相応しいのは、おまえじゃない”
……最悪な夢。
……くそっ、なんで朝から賀川なんだよ……っ。
昨日奈緒を送ってから、頭の中にはずっと賀川の言葉が繰り返されていた。
兄貴も一緒に死んだって……、三人一緒なら病気じゃねぇし。
……事故か?
“桜木は奈緒の事を何もわかってない”
……俺だって、ちゃんとあいつの事わかってやりたい。
でも、俺が聞けば、あいつは思い出して悲しい顔をするから。
それに……。
あいつは多分、なぐさめてほしいわけじゃねぇと思うし。
そんな事ばかりが頭の中を堂々巡りする。
結局あまり眠れないまま朝を迎えて、ベッドから下りる。
ケータイの時計が、6時37分を刻んでいた。
……あいつ、昨日の今日で学校くんのか?
ふと気になって、ケータイのメモリから奈緒の番号を呼び出す。
“水谷奈緒”
NO。1に登録してある番号がすぐに表示された。
……考えてみると初めてだよな? 電話……。
そう思って、ためらった後……、発信ボタンを押した。