イジワルな恋人
……LL……PULL……。
電話がコールされる音に、心臓が少しリズムをあげた。
……つぅか、俺、女に電話すること自体初めてだよな。
たいがい向こうからかかってきてたし。
……出ない事のが多かったけど。
……PUL―――
『……亮?』
ケータイの向こうから奈緒の声が聞こえて、その声に緊張が解けていくのがわかった。
『どうしたの? 電話、初めてだね』
「……そうだっけ?」
それでもまだいつもよりは煩い心臓を感じながらも平然を装う。
……初めてで緊張したなんて、絶対に言えねぇ。
『そうだよ。……どうしたの?』
「……おまえ、体調は?」
奈緒は少し黙って、落ち着いた声で答える。
『……大丈夫だよ。それで電話くれたんだ。
ありがとう』
電話の向こうで微笑む奈緒の顔が頭に浮かんで……、俺も少し表情を緩める。
「じゃあ、いつも通り迎えに行くから。あと、無理して弁当作るんじゃねぇぞ」
『……亮、おばあちゃんみたい』
「は?!」
奈緒の言葉に、思わず顔をしかめる。
『だって、朝、おばあちゃんにも同じ事言われたんだもん。
大丈夫だよ、今日のはおばあちゃんが作ってくれたから』
「……じゃあな」
面白くない気持ちに、電話を切る。
……んだよ、ばあちゃんって。
……俺って、こんな心配性だったのか?
あー……まじかっこわりぃし。
明らかに今までとは違う自分に戸惑いながら、片手で顔を覆ってその場にしゃがみこんだ。