イジワルな恋人
……―――三年前のあの日。
中一だったあたしは、憧れていた部活の先輩から告白をされて、学校中に噂が流れていた。
先輩が場所を選ばないで、朝練の最中に告白してきたからだった。
でもその時のあたしは嬉しくて。
ひやかされるのも気にならなかったし、そんな噂さえも嬉しく感じていた。
そしてその日、初めて一緒に帰る約束をした。
夏の日は長くて、部活が終わって二人で帰りながら太陽が沈むのを眺めた。
学校を出たところで、先輩があたしの手を握った。
あたしはびっくりして、先輩の顔も見れられなくて。
そっと握り返すのがやっとだった。
家までの10分ちょっと、ずっと手を繋いで……
あたしにとってそれは夢のような時間だった。
……―――でも、夢はすぐに覚めた。
あるはずの家の周りに、何台もの消防車と救急車。
太陽の沈んだ暗いはずの空が、炎でオレンジ色に染まっていた―――……。