イジワルな恋人




……―――三年前のあの日。



中一だったあたしは、憧れていた部活の先輩から告白をされて、学校中に噂が流れていた。


先輩が場所を選ばないで、朝練の最中に告白してきたからだった。


でもその時のあたしは嬉しくて。

ひやかされるのも気にならなかったし、そんな噂さえも嬉しく感じていた。


そしてその日、初めて一緒に帰る約束をした。

夏の日は長くて、部活が終わって二人で帰りながら太陽が沈むのを眺めた。


学校を出たところで、先輩があたしの手を握った。

あたしはびっくりして、先輩の顔も見れられなくて。

そっと握り返すのがやっとだった。


家までの10分ちょっと、ずっと手を繋いで……

あたしにとってそれは夢のような時間だった。



……―――でも、夢はすぐに覚めた。


あるはずの家の周りに、何台もの消防車と救急車。


太陽の沈んだ暗いはずの空が、炎でオレンジ色に染まっていた―――……。





< 147 / 459 >

この作品をシェア

pagetop