イジワルな恋人
【亮SIDE】
「あ、奈緒ちゃん」
隣にいた武史が、グランド入り口を指差して言った。
校内放送を聞いてグランドに出ると、既にたくさんの生徒が集まっていて、その光景にため息が出る。
「……おまえ、やけに奈緒を見つけるの早いよな」
……確かリレーの練習ん時も武史が見つけたんだったよな。
「だって可愛い女の子探してっと必ず奈緒ちゃんに目が止まっちゃって……。
亮、奈緒ちゃんと別れる予定ないの?」
嬉しそうに聞く武史に、俺は苦笑いを浮かべて……武史の腰のあたりを蹴飛ばした。
「いってぇ! 冗談だろうが!」
「……冗談でも言うんじゃねぇ」
不機嫌にそう言った俺に、武史がニヤニヤしながら口を開く。
「今回は余裕がないようですねー、亮くんともあろうお方が。
そんなに入れ込んじゃって……いてっ!!
……おまえ、同じとこ蹴るなよ! あざになんだろ?」
……知るか、んなこと。
痛がる武史を横目に、奈緒に視線を移す。
奈緒は梓にハチマキを巻いてもらっているところだった。