イジワルな恋人
……あ、やべ。ハチマキもらってねぇ。
まぁでも、大丈夫だろ。
ハチマキ配布の時も屋上でサボっていた事を思い出すも、それほど気に留めないでいると、武史が今更になって思い出した事を口にする。
「あ、そういや亮ハチマキは?
忘れたやつは今日放課後グランド片付けだって。
賀川ちゃんが言ってた」
「……遅ぇんだよ。今頃言うんじゃねぇよ」
苛立ちながらため息を落とした時、突然後ろから呼びかけられる。
「亮!」
振り向いた先には、奈緒の姿があった。
「奈緒ちゃん!」
俺より先に奈緒の名前を呼んだのは武史だった。
知らない男に名前を呼ばれて警戒したのか、奈緒が真顔になって俺の傍に寄る。