イジワルな恋人


――ピンポーン。


手紙を読み終えて、そのままキッチンに立ってぼーっとしていた時、チャイムが鳴った。

一瞬、警察やマスコミだったら、なんて不安が浮かんだけど、今朝のニュースの扱いを思い出して、そんな不安は消えていく。

当時は毎日騒ぎ立てていたマスコミも、イヤミな事を言う警察も、涼しい顔で話すアナウンサーも……。


もう誰も、あたし達のことなんて覚えてもいない。


――ピンポーン。


「あ……、」


急かせるチャイムに、廊下を走って玄関のドアを開けた。


「あ、おはよう」

「……―――え、」


思いがけない人物の訪問に、驚きが隠せなかった。


「……どうしたんですか? ……中澤先輩」

「今日……、ご家族の命日だろ?

線香だけでもあげさせてもらえないかな?」

「あ、はい」


戸惑いながら中澤先輩を家に迎え入れた。


「去年はさ、ちょうど日曜で休みだったからお墓に行ったんだけど……、今日はこれから学校だし……。突然で悪いな」


中澤先輩の言葉に驚いて話しかけようと口を開いて……、でも、中澤先輩が仏壇の前に座ったから言葉を呑んだ。



中澤先輩が手をあわせ終えるのを待って、その背中に話しかける。



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