イジワルな恋人


話って、なに……?

……やだ、怖い。

聞きたくないっ。


だって……、もしかしたら亮は、佐伯さんと……っ。


「……奈緒?」

「や……!」


亮が握ろうとした手を、咄嗟に振り払った。


「……どうしたんだよ。何そんな顔してんだよ」


悲しさと不安から顔を歪めたあたしに気付いた亮が、心配そうに見つめてくる。


その瞳がとても優しくて……、

優しすぎる亮の表情に、詰まっていた想いが言葉になって溢れた。


「だって……佐伯さんとの事でしょ? 

何があったとか……、キスするとか、聞きたくないっ」


もし聞いちゃったら……、もし、何かあったなら。

あたしは、きっと、亮を許せないよ……。

好きだから、きっと許せない。


聞いちゃったら、『さよなら』になっちゃう……っ。

だから、聞きたくない。


「あたし……、知らないままでいい。

亮の口から他の女の子と何があったかなんて、聞きたくない……」


身体を縮こませたままそれだけ言うと、亮はしばらく黙った後、短いため息をついた。



< 360 / 459 >

この作品をシェア

pagetop