イジワルな恋人
「……先に言っとくけど、佐伯とは何もしてねぇし、何もしねぇ。
……一方的に誘われはしたけど断ったし」
いつもみたいな、面倒くさそうな亮の口調。
その声に、あたしはうつむいていた顔を上げた。
「……本当に?」
恐る恐る聞くと、亮は少し顔を歪ませる。
「ああ。……おまえ、俺が佐伯嫌ってんの知ってんだろ?それなのになんで疑うんだよ」
「だって、亮が隠すから……っ。
最近、様子もおかしかったし……。
それに、何にも話してくれないから……」
どんどん声が弱々しくなっていったあたしに、亮がまた軽くため息をつく。
「……奈緒」
亮は向かい合うように座り直して、あたしの両手を握った。
「……落ち着いて聞けよ?」
あたしの手を握る亮の手に……、力がこもる。
亮が向けてくる真剣な顔に、緊張が包み込む。
「おまえ、中学ん時の記憶、何日か抜けてんだろ?」
「え……なんで知ってるの?」
不思議に思って聞くと、亮が少しためらってから答える。