イジワルな恋人
「何見てんのよっ!
アンタも……、アンタも、あの時死ねばよかっ……きゃあっ!」
「……っ?!」
突然、従業員室のドアが開いて……入ってきた店長が佐伯さんを叩いた。
「……美沙、いい加減にしろよ」
……『美沙』?
あたしは入ってきた店長の背中を見つめて顔をしかめた。
……なんで呼び捨てなの?
二人の間に、何かあるの……?
『なんで店長クビにしないんだろう』
頭に、ずっと不思議だった事が浮かび上がる。
「水谷……ごめんな、嫌な思いさせて」
振り向いた店長に、咄嗟に首を横に振った。
「あの事件は水谷のせいなんかじゃないよ。犯人の身勝手な犯行だ」
店長がそう話しても、佐伯さんは黙ったままうつむいていた。
そんな佐伯さんに違和感を感じて……あたしはその様子を見ていた。
いつもなら絶対に突っかかって、店長の言葉を否定するハズの佐伯さんが、床を見つめたまま動かない。
「美沙とは親戚なんだ。……こいつも昔はこんな奴じゃなかったんだけど……。
川口が事件起こしてから、『人殺し』って学校で虐められたりして……。それから変わっちゃって……」
店長の言葉に驚きながら、佐伯さんを見続けた。
そして……、佐伯さんの肩が少し震えていることに気付いた。