イジワルな恋人


あの放火事件の数日後、一度だけ犯人の両親が謝罪にきた。


あたしは……うつむいたまま顔も見なかった。

謝る2人を前に、何も言わなかった。言えなかった……。


『あたしの気持ちなんかわかんないくせに』


そんな風に思って……一言も話そうとしなかった。


だけど、あの事件は……、

あたし達家族だけの問題じゃなかったんだ。



加害者の家族も……、

親族も……。


苦しんでたんだ……。


そう思うと切なくなった。



やり場のない思いに……、目を閉じて、手をきつく握り締めた。




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