イジワルな恋人


外に出ると、お昼過ぎに降り始めた雨がまだ音を立てていた。


バイト先に置いてあった傘をさして歩き始める。

左頬が少しヒリヒリして手をあてると……少し、みみず腫れになっている事に気付いた。


……ああ、あの時か。

佐伯さんがあたしの髪を掴んだ時、佐伯さんの尖った爪が当たった事を思い出す。


……明後日帰るって言ってたっけ。佐伯さん。


それを考えると、気持ちに靄がかかって息苦しくなる。


あたしと同じ時間苦しんで、今まで必死に生きてきたんだと思うと……。

今までの事も許したい気持ちになる。


……だけど、自分が苦しんできたからって、他人に迷惑をかけていいわけじゃない。


佐伯さんは、関係ない亮を巻き込んだ。


あたしだけだったら許してたかもしれない。



だけど……、

佐伯さんはあの事件に囚われて、亮の人生を狂わせた。


亮を悩ませた。

傷つけた……。



あたしは……、それが許せない。

それだけは、絶対に許せない。




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