イジワルな恋人



「……あ、おばあちゃん? 今日ちょっと寄り道してくから。

……うん、心配しないで」


電話する奈緒を横目で見る。

ストラップもデコレーションもなくてシンプルなケータイ。

だからか、余計に電池パックのあたりに貼ってあるプリクラが目立っていた。


「はぁい、じゃあね」


電話が終わるのを待って、奈緒の手からケータイを抜き取る。

写っていたのは……奈緒と20代前半くらいの男だった。


「あっ、ちょっと! 返して!」


ケータイを取り返そうとする奈緒を右手で押さえながら、プリクラの男を眺める。

……なんか見覚えがあるんだよなぁ。

この顔……どこで見た?


「返して!」


じっと考える俺の右手をくぐり抜けて、奈緒がケータイを取り上げる。

キっと睨みつけてくる奈緒に、俺は少し驚きながら聞く。


「……おまえ、いいのか? 男嫌いなんだろ?」

「え? 何が……」


俺の言葉に、奈緒はその理由をようやく理解したみたいだった。

奈緒は、片膝を俺の足の間に置いている状態で固まる。


近距離で向かい合うような体勢から抜け出せずに、顔を真っ赤に染める。


< 41 / 459 >

この作品をシェア

pagetop