イジワルな恋人
「……あ、おばあちゃん? 今日ちょっと寄り道してくから。
……うん、心配しないで」
電話する奈緒を横目で見る。
ストラップもデコレーションもなくてシンプルなケータイ。
だからか、余計に電池パックのあたりに貼ってあるプリクラが目立っていた。
「はぁい、じゃあね」
電話が終わるのを待って、奈緒の手からケータイを抜き取る。
写っていたのは……奈緒と20代前半くらいの男だった。
「あっ、ちょっと! 返して!」
ケータイを取り返そうとする奈緒を右手で押さえながら、プリクラの男を眺める。
……なんか見覚えがあるんだよなぁ。
この顔……どこで見た?
「返して!」
じっと考える俺の右手をくぐり抜けて、奈緒がケータイを取り上げる。
キっと睨みつけてくる奈緒に、俺は少し驚きながら聞く。
「……おまえ、いいのか? 男嫌いなんだろ?」
「え? 何が……」
俺の言葉に、奈緒はその理由をようやく理解したみたいだった。
奈緒は、片膝を俺の足の間に置いている状態で固まる。
近距離で向かい合うような体勢から抜け出せずに、顔を真っ赤に染める。