イジワルな恋人


「うん。だから、おばあちゃんがおじいちゃん達のところに行ったら……いいよ。

佐伯さんの好きにして……。

どうしても、おばあちゃん1人は残せないから……」


微笑んだあたしを見て、佐伯さんの目にまた涙がたまり始める。


「あたしだって、こんな事したいわけじゃなかった……っ! 

アンタがつらい思いしてるって事くらい、あたしだって分かってるっ。

だけど、気にしないようにしても、どうしてもアンタばっか気になって……」


ぎゅっと握り締めるカッターが、川から反射する光に小さく光る。


「ずっと事件を引きずってるのも気に入らなかった……。

あたしには被害者ぶってるようにしか見えなくて、見る度にイライラした。

亮くんだって……、本気で欲しかったわけじゃない。

アンタが幸せそうにしてるのが許せなかったの……。

今まで散々被害者面してきたのに……、あたしよりアンタが幸せなんて……」


「許せなくて……」最後の言葉は……、聞こえないくらいかすれていた。


泣き崩れている佐伯さんに、ゆっくり近寄る。


「……佐伯さん、あたしが気に入らないなら、事件に執着するのをやめて前を向けばいいんだよ。

簡単な事じゃないのは分かってる。だ

けど……過去に執着してる限り、どんなに頑張ったって前には進めないんだよ。

あたしもそうだったけど……そんなの、もったいないよ」


なるべく落ち着いた声で言うと、佐伯さんは顔を上げてあたしを睨んだ。


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