イジワルな恋人
智也って……、やっぱり店長の事だったんだ。
っていうことは、佐伯さん、店長があたしの事好きだと思ってたって事……?
……そんなわけないのに。
で、結局、両思いだったって事だよね?
……人騒がせだな。
だけど、店長が佐伯さんを支えてくれるなら、きっともう大丈夫だ。
店長だったら、きっと。
安心して笑みをこぼしてから、家に帰ろうと来た道を引き返す。
でも、ふと、佐伯さんのカッターが頭に浮かんで足を止めた。
……どこに飛んだんだろ。
危ないし拾っとかなくちゃ……。
地面を見渡してカッターを探し始める。
「……ホント人騒がせ」
呆れて笑いながら独り言をもらすと……。
「ホントにな」
「!!」
突然聞こえた声に、びっくりして顔を上げた。
「……亮」
あたし見つめている亮の顔は、見るからに不機嫌で、というよりも怒りに満ちていて。
手には探していたカッターが握られていた。
気まずく思いながらも、見上げる。